診療の進め方
動物の診療の進め方は、人の小児科の診療に似ているかもしれません。痛みや体の変調を言葉で訴えてくれませんので、飼主様の日頃からの観察がとても大切になります。食欲はあるか、元気はいつも通りか、お水ばかり飲んでいないか、オシッコの量、色、回数が普段と変わりはないか、便の固さ、色、回数はどうか、息づかいは荒くないか、歩き方に変化はないか、など、些細なことでも動物に代わって教えていただくと、診療を進める上で大いに役立ちます。
このような心配事を細かく教えていただくだけで、どのような病気を疑っていいか大まかに推測することができます。お話をお伺いした後、視診、聴診、触診などでさらに問題点を明らかにしていきます。それでも分からない場合には検査が必要になってきます。
当院ではインフォームドコンセントを大切にし、検査の目的について十分な説明を行い、了承を得た上で検査を行っています。また、その結果についても飼主様が十分に納得して頂けるよう説明しております。
各種検査について
血液検査
血液検査は健康診断、病気の発見、または手術前の健康状態の把握のために頻繁に行われる基本的な検査です。
血液検査には主に、血球計算、生化学検査、凝固系検査などがあります。血球計算では赤血球、白血球、血小板などを測定し貧血や炎症の程度を検査します。
生化学検査では体内の内臓系の酵素や血糖値などを計測します。またこの検査での異常を元に、専門の検査センターに依頼してホルモン測定などを行ってもらうこともあります。凝固系検査では、特に手術前に止血能力に異常がないかを検査し、出血のリスクなどを調べます。
尿検査
尿検査では尿試験紙と尿沈渣で異常を見つけます。尿試験紙ではPHや出血、尿糖などを検査します。尿沈渣は採れた尿を遠心分離することで沈殿した内容物を顕微鏡で観察します。これにより細菌、結晶、また腫瘍細胞などが確認できます。またこの検査結果をもとに超音波検査で膀胱の形態や膀胱内の異常を確認することもあります。
糞便検査
糞便検査では腸内細菌バランスの異常や寄生虫の感染があるかなどを検査します。また糞便の性状から脂肪やタンパクなどの消化不良が起きていないかなども観察します。
皮膚検査
皮膚病には細菌、真菌、寄生虫、アレルギーといったものが原因となりますが、これらが単独ではなく複数関与して皮膚病を引き起こしていることが多く見られます。これらを確実に診断するためには、皮膚や被毛の一部を採取して顕微鏡下で観察することが必要となります。難治性の皮膚炎の場合には、皮膚生検と言って皮膚の一部切り取り組織学的検査を行うこともあります。また、痒みがひどくてアトピー性皮膚炎や食事アレルギーが疑われる場合には血液を採取してアレルギー検査を実施します。
眼科検査
主な眼科検査には、角膜染色試験、眼内圧測定、涙液産生量測定、眼底検査などがあります。角膜染色では目の角膜に傷ができているかどうかを特殊な染色液を用いて検査します。眼内圧の異常は緑内障やぶどう膜炎といった疾患でみられ、これらの病気が疑われるときに眼内圧を測定します。涙液測定では主に乾性角結膜炎(ドライアイ)の診断に必要な検査です。眼底検査は、網膜や視神経の異常を疑う場合に必要となります。他にもスリットランプを用いて角膜や水晶体の検査も行います。
また、視力の有無を確認する網膜電位図などの特殊な検査が必要な場合は、眼科専門の病院への紹介も行っています。
画像検査
画像検査には、レントゲン検査、エコー検査、内視鏡検査があります。
レントゲン検査は、骨の病気、心臓肺の病気、あるいは肝臓や胃腸などの内臓の病気、腫瘍などが疑われるときに頻繁に行われる基本検査のひとつです。レントゲン検査によって体全体の構造、臓器の形、腫瘍の大きさと位置などを確認することができます。
エコー検査は、体に負担を与えることなく各臓器の内部構造を見ることができる素晴らしい検査法です。眼内の異常、心臓病、肝臓や腎臓の病気、子宮や膀胱の病気、妊娠の確認などの診断検査に威力を発揮します。
内視鏡検査は、胃腸の炎症や腫瘍が疑われるときに実施し、直接目で見て診断することができます。同時に組織の一部を採取して病理検査を行います。また、誤って飲み込んでしまった異物を取り除く際にも内視鏡を使用します。
病理検査
腫瘍が疑われるときには、腫れている部位に注射針を刺し、細胞を採取して診断します。これを針生検と呼びます。この検査で診断できる腫瘍には限りがありますが、診断に至らなくても良性か悪性かは判断することができます。最終的な診断は病理専門医に検査材料を送って診断してもらいます。
インフォームドコンセント
インフォームドコンセントとは、獣医師と飼主様とが動物の病気について話し合い、同意ではなく合意によって治療を進めることをいいます。
当院では、検査や治療について単に内容を説明するだけではなく、飼主様とコミュニケーションを十分に取って信頼関係を築くことこそが大切と考えています。獣医師が必要と思う獣医療と飼主様が望む獣医療とは異なる場合があります。
動物を家族の一員と考えている飼主様にとって、必要と分かっていても痛みを伴うような治療を望まないかもしれません。また、できる限りの治療を行って一日でも長く生きてほしいと願う飼主様もいらっしゃいます。
当院では、話し合いの中で様々な獣医療を提案し、納得いただけるまで話し合い、十分に理解していただいた上で診療を行いたいと考えています。少しでも疑問に思われたこと、理解できなかったことがあれば、いつでも聞いていただければと思います。また、診療料金についても見積りをお出しするなどして対応しております。
飼主様から信頼される動物病院でありたいと日々努力しています。
入院について
手術後や、継続的な検査、点滴、酸素吸入、保温などで集中管理を行う場合には入院が必要になります。入院時は家族から離され、異なる環境で過ごさなければなりません。当然、病気のストレスに加え精神的なストレスもかかることになります。当院では、ストレスの軽減のために、温度や騒音や臭いに気をつけたり、また頻繁に声を掛けたりして、できるだけ不安を取り除くよう配慮しております。それでも、ストレスに弱い動物には、在宅治療や日帰り入院も選択できるようにしております。
また、入院が長引く場合には、お見舞いもお受けしております。その際には、他の入院動物に迷惑がかからないよう、大勢の家族の方のお見舞いはご遠慮させていただくこともあります。
手術について
当院では、緊急手術以外は予約制で手術を行っています。前もって、手術の必要性、手術に伴う危険性、術前検査の必要性、料金の見積作成など、飼主様に十分な説明を行ってから手術の予約をお受けしています。また、難易度の高い手術や特別な医療機器を必要とする手術が見込まれる場合は、専門医へのご紹介も行っております。詳しいことは当院スタッフにご相談下さい。