- 2012-07-21 (土) 12:57
- 病院スタッフ
動物病院の外来で最も多い病気は犬の皮膚病です。特に、暑い時期は皮膚病が多くなります。日本の夏は高温多湿ですので、それも影響しているのかもしれません。
皮膚病で飼主様が最も心を痛めるのは痒みではないかと思います。病院では痒みを、飼主様の主観で10段階のスコアで評価していただいています。時々掻いている程度なら3〜4/10、いつも掻いているなら7〜8/10、夜も眠れないほどの痒みなら9〜10/10というようにスコアをつけます。
7/10以上の強い痒みを伴う皮膚病は、ほぼ4つの病気にしぼれます。それらは、疥癬(ヒゼンダニ)、膿皮症(細菌性)、マラセチア皮膚炎(酵母菌)、アレルギー(犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギー)です。これらの病気は皮膚検査で鑑別しますが、獣医師を悩ませるのがアレルギーです。
犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは症状が似ていて、鑑別は容易ではありません。犬アトピー性皮膚炎は、血液中の免疫グロブリンの1つであるIgEの量を調べて、どのようなアレルゲンに反応しているのかを検査して診断します。近年、食物アレルギーは主にリンパ球が関連するⅣ型アレルギー(遅延型アレルギー)が原因していることが明らかになりました。食物アレルギーの診断は、除去食試験といって、いままで食べたことのない1種類の蛋白源と1種類の炭水化物源を2ヶ月与えて痒みを評価する方法で行っていました。しかし、この方法は飼主様にとっていろいろな意味で負担が多く、評価が難しい検査法でした。数年前より、リンパ球を培養して検査する、リンパ球反応検査が国内で開発され、成果を上げています。このリンパ球反応検査は、血液で行いますから、飼主様の負担もなく、食物アレルギーを正確に診断できます。
当院での検査結果から、食物アレルギーが予想していたよりも遥かに多いことが明らかになりました(犬アトピー性皮膚炎の併発を含めて9割以上が食物に関連)。痒みで困っているワンちゃんにこの検査を受けさせ、原因を明らかにして対処してあげましょう。
獣医師 西山栄一
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